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社長コラム:PRESIDENT’S COLUMN

vol.042スポーツの集客力を高める「祭り」化戦略

日本のスポーツ産業は約5兆円規模と言われています。経済の中核を担う自動車産業は約15兆円。スポーツ大国と呼ばれるアメリカでも、同様の大小関係でした。それがこの15年で、"豊かな国アメリカの象徴"であった自動車産業をスポーツ産業が凌駕しました。
この事実は、我々の大きな希望であり目標となります。アメリカ人にできることが日本人にできないことはありません。我々次第で、これから日本に起こる現実とすることができるのです。それほど大きな可能性のある市場に我々はいる、ということです。

スポーツが成長産業であるアメリカでは、試合の日は老若男女が1日中楽しめて、試合を骨の髄まで楽しませる仕掛けや場所があります。
人々が車や船やプライベートジェットで訪れるそこは、故郷や母校、子供の通う学校などなど。グラウンドの外の広大な駐車場にテントを張り、地元のスーパーで買い出しをし、バーベキューで盛り上がる。そこは若い男女の出会いや旧友との再会、あるいは家族団らんの場所となる... 
こうしたパーティーでテンションをMAXにして試合に乗り込むため、試合での盛り上がりは言うまでもありません。誰もが、試合を見にくるのではなく参加しに くるのです。
例えば、カレッジフットボールの好ゲームでは「tearing down the goal post」という、観客が直接参加してしまう名物ハプニングがあります。ホームチームが勝利を収めたとき、ファン達が一斉にグラウンドになだれ込み、ゴールポストをなぎ倒してしまうのです。

他にも、アリゾナ州で行われるゴルフのフェニックスオープンは、50万人以上の集客を誇る世界最大の試合です。観客の目当ては名物ホール、16番のショートホール。そこはなんとスタジアム化されているのです。テニスやゴルフは静かに観戦する競技ですが、このホールだけはグリーンに乗ればスタンディングオベーション、はずせばブーイングの嵐。50万人の観客が、この名物ホール見たさに押しかけるのです。
これは、約70年前に「地元に密着した面白い大会をやろう!」とゴルフ好きの地元有志達が大会を作ったところから始まります。 近隣の学生を招待したり、ロックバンドを呼んだり、地元のプロフットボールチームのジャージを着ていれば無料、など様々な仕掛けをし、いまだ集客の記録を更新しています。
「地元密着の面白い大会をやろう」というコンセプトの正しさ、コンセプトにそった連綿たる努力と蓄積が、既成概念を打ち破り、新たな価値を創造している実例。これこそまさにスポーツ産業におけるイノベーションです。


参加して楽しむエンターテインメント性

これらからわかるように、アメリカでは試合を見るだけでなく、試合に参加し楽しむという環境があるのです。これによって集客が増加し、スポーツは成長産業へと飛躍を遂げました。得られるヒントは「参加して楽しめる」環境による「集客の増加」です。

そこで我々ドームは、日本のスポーツ産業の成長戦略として、2013年のテーマを次のように定めました。

それは「祭り」です。古来、「祭り」は最大のエンターテインメントであり、まさに自らが参加するイベントです。祭りを参考に、日本のスポーツシーンに参加するという要素を取り込むのです。すると集客力は飛躍的に高まるはずです。

日本には、巨大な祭りがいくつもあります。例えば、阿波踊りで有名な徳島市。人口約26万人の都市に、毎年約130万人もの人が名物祭りに足を運びます。
計算してみましょう。徳島市以外から阿波踊りに参加するお客さん約百万人が、宿泊で2万円、交通費で2万円、飲食、お土産で1万円、合計5万円使ったとすると、500億円の経済効果。さらに日本には100万人以上の集客を誇る祭りが20以上も存在するのです。こんな凄い祭りの威力、真似ない手はありません。
来場したお客さんが熱狂し、解放され、「あー、楽しかった!」と心の底から思うようなイベントにすることが、スポーツを産業として発展させ、文化として定着させていく端緒なのです。

ファンがゴールポストをなぎ倒す、という事が日本で起こればどうなるでしょうか。グラウンドに入った瞬間に警備員に捕まえられるのではないでしょうか。しかしおとなしく観戦するだけではスポーツの醍醐味を十分に味わえません。死力を尽くして戦う選手と観客が同化して、本能を解放する。これこそがスポーツ観戦の本来の醍醐味ではないでしょうか?
大胆で豪快なアメリカと比べると、日本人はとてもおとなしく、安心、安全が大好きな国民性...と見えて、実はこの先入観は全く当てはまりません。
兵庫・西宮神社の「福男選び」、大阪の「岸和田だんじり祭り」、長野・諏訪大社の「御柱祭り」など危険で知られる祭りが日本には多数存在。日本人は危険が大好きであり、それを受け入れる大きな度量もあります。
危険であろうと勇壮で神秘的な祭りの迫力に人々は熱狂し、解放され、未来への活力を蓄えるのです。
スポーツ観戦を危険な場所にする必要はありませんが、祭りの要素を少しでも取り入れ、観客を熱狂させ、満足度を高めること。酒、出会い、踊り、狂乱、解放... これらの要素が、人々を熱狂させるのだと考えています。


FISフリースタイルスキーワールドカップ

昨年から特別協賛しているモーグルのワールドカップを、今年は復興の意味を込めて2月に福島県の猪苗代で行いました。

テーマも「祭」とし、ドームの考える祭り化戦略を具体化するとともに、福島が誇れる一つの大きな祭りを作り上げることを目指し、実行しました。
今まで、日本におけるモーグルワールドカップの最高の集客数は3千人。世界のトップアスリートが集まる大会なのに、非常にもったいない数字です。
そこで我々は、福島県、猪苗代町、全日本スキー連盟、福島県スキー連盟、そして最高の環境を用意してくれるリステル猪苗代とスクラムを組み、祭りの要素をふんだんに取り入れ、福島県民が猪苗代に集まり、旧友と再会し、語り合い、熱狂・解放する場を企画しました。

まだまだ先も見ています。モーグルワールドカップで最も集客の多い大会はアメリカ・ディアバレーの7千人。つまり猪苗代で1万人を集客すれば世界一の大会となります。さらにアルペンスキーのワールドカップ、オーストリアのシュラートミンク大会は10万人の集客。モーグルの次はアルペンワールドカップの日本開催を復活させ、それぞれ数万人規模の大会に育てたいと考えています。

10万人は途方もない数字と思われるかもしれませんが、これが目標ではありません。福島県で行われる「わらじ祭」の集客は約30万人です。それはすなわち、モーグルワールドカップ福島猪苗代大会でも30万人の集客の可能性があるということに他なりません。
信じれば叶います。ライバルはディアバレーでなく、わらじ祭です。

かつては隆盛を誇ったスキーも、バブル崩壊以降、年々参加人口が減っていくという大変厳しい現状があります。さらに不景気により2年前には開催を断念せざるを得なかった日本大会。これを復活・成功させ、スキー産業と地元経済が活性化すること、大会自体が独り立ちし、永続的に行われること。そして、次代を担う若い選手たちが育つこと。それらを目指し、これからも活動を続けてまいります。

スポーツ最大の祭り、オリンピック

2020年のオリンピック開催地として、東京が最終候補地の1つに残っています。世界最大のスポーツの祭りが日本にやってくるかもしれません。これは大きなビジネスチャンスです。皆様も準備はいいですか?

ドームはと言えば、今年よりJOCのオフィシャルスポンサーとなり、オリンピックのマーケティングに参画いたします。
今から7年後、ドームは既存の概念を超えた新しいスポーツ企業として、キラキラ輝く圧倒的な存在となり、この2020年の東京オリンピックを先頭に立って牽引しているはずです。
スポーツは勇気や希望を与える、という抽象的な効果だけでなく、具体的な経済効果も高いということを、この7年で絶対に証明してやる! と意気込んでいます。

かねてより、ドームは業界内のシェア争いに興味がありません。現状あるパイの取り合いは、了見の狭い争いです。
日本は誇るべき立派な国です。我々日本人は誇りをもって、堂々と成長を目指して行くべきだと考えています。
目指すべきは既成概念との戦いであり、成長と市場拡大です。市場拡大こそがドームのみならず、お取引先様、お客様、皆様の明るい未来を作っていくのだと信じています。

ドームの成長などは、まだまだ小さな話です。皆様と共に成長し、突き抜けた大きな飛躍をしていくこと。皆様と共に、ス ポーツの祭り化と大いなる繁栄を目指し、2013年を邁進してまいります。

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