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社長コラム:PRESIDENT’S COLUMN

vol.049「Stand by me」

一期一会とはよく言ったモノだ。最近、この手の味と深みのある四字熟語や諺、英語のQuoteなどに、若い頃に感じもしなかった共感を覚える。ついでに言うと涙腺も緩くなってる。歳をとると偉大な先輩方の残してくれた言葉の数々が身に染みるのだなあ、と実感する...

今年も早いもので、もう振り返る季節がやってきた。「Baddest!」などと僕なりには大変威勢よく幕を開けた2014年ではあったが、公私共々、信じられないくらいバラエティーに富んだ出来事が、ものすごい振れ幅で目の前に立ちはだかった年でもあった。「Baddest!」は主体性が軸であろうが、現実は次から次へ起こってくる好機、難題、辛苦... などなどすべてを受け止めるだけでいっぱいいっぱいな状態であった。が、こうなったらもう「終わりよければすべてよし!」という、あまり深みを感じない諺に威を借りて、残りひと月くらいはBaddest!で締めくくろう、と、そう改めて心に誓う...

話はやや脱線するが、平均成長率が30%近い株式会社ドームなので、僕自身、毎年毎年、新しい出来事に出くわし、あるいは自ら火中の栗を拾い、心身ともに「堪える状態」であることが多い。そんな時の解決方法は今も昔もとにかく「慣れること」と決めている。

リーダーの仕事は主に「思考と決断」である。ともに高いレベルの精神の安定が求められる難しい作業だ。塞ぎ込んで前向きな論理構成が出来るなら、いくらでもしかめっ面で部屋に閉じこもる。怒りまくっていい決断が下せるなら、一日中怒鳴り散らしてる。でも、必要なモノは、未来を切り拓く建設的なアイデアだし、誰もが心から共感し感服する正しい決断だ。その果実を得るには「心の静寂」が不可欠だ。他人のことは知らないが、僕にとっては前向きなエネルギーが醸成される「心の静寂」がとにかく一番大切なのである。
なので、上手くいかない状態や、どうしていいか分からないドキドキした状態に「慣れる」こと、「これが普通だ、慣れろ!」と不安な心を押さえつける。解決を急がず、逃げることなく心の中にしっかりとその問題を据え、その状態に「慣れる」こと。そんな事を日課として十数年過ごしてきたが、今年はとにかく「慣れる」のに一苦労した。逃げ出したい気持ちの首根っこをグッと掴み、心に縛り付ける。同時にいくつも降り掛かってくる難題も一つ一つ心の中に縛り付ける。とにかく、今年の「問題たち」は暴れん坊揃いであったが、なんとか一匹も逃げ出さずに、そしてその一つ一つがそれぞれ意味を持ちながら、正しい決断という出口に運び出すことができたかなぁ... くらいに思えるまでにはなってきた。

主題から脱線したまま話は進むが、心の静寂を得るために必要な要件は「明るい未来」である。「希望」や「夢」という言葉に置き換えられるかもしれない。なので、いかに「明るい未来」を描けるか、ということが感情の起伏を押さえる鍵となる。「困難に慣れろ、未来は明るい!」と... 長々と書いたが、一言にまとめて見るとメチャクチャ簡素であった... ^^;

そう、視点を変えてみると今年は「明るい未来」を描ける素晴らしい出会いに溢れた一年でもあった。数々の困難を、素敵な出会いが救ってくれたと言ってもいいかもしれない。

そもそも、僕は社交的じゃない。僕を知っている人は信じられないと言うかもしれないが、僕をよく知っている人は、そのことをよく知っていると思う。国境や老若男女含めて幅広くコミュニケーションを取れる能力は高いと思うし、ユーモアのセンスは天下一品だ。だから、よく社交的だと勘違いされてしまうことがしばしば。が、夜の接待などはほぼ皆無で、仕事以外の世間話を他人とする... というのがメチャクチャ苦手なのだ。
そもそも、学生時代より「人脈」という言葉が嫌いである。友情や信頼、という言葉と違い、人脈という言葉に直感的な魅力を感じたことがない。人との信頼関係は仕事を通じて、お互いの人間性を出し合い、切磋琢磨することが一番だし、目的の希薄な夜の宴席で意気投合して、仕事につながったことなど一度も無い。他人は知らないけど、僕はそうなのだ。
ちょっと偉そうな感じに取られてしまうかもしれないが、現実は日中は他人とのコミュニケーションに全力投球するので、アフターファイブは大切な静寂と思考のひと時、「誰も話しかけないでー」という状態に突入する... 帰り道のコンビニで「ポイントカードお持ちですか?」という質問が苦痛で仕方ない... それだけ「一生懸命、人と向き合って、深く思考している...」ということなんです!

再び一期一会。

数々の出会いがあった中で、もっとも未来への可能性を感じさせてくれたのは、大手企業・K常務と琉球ゴールデンキングス・木村社長である。正確にいうとK常務との出会いは去年の暮れ、木村社長は今年の4月。それぞれスポーツマーケティングに関して天才的な感性を持つだけでなく、内容や経験の違いはあれど、自らが汗をかいて具体的な実績、成果を上げてきたという共通点がある。言うだけじゃない、というのが大きなポイントだ。
今までも色々な出会いがあったが、尊敬できる人、仕事で圧倒される人と巡り会ったことは数少ない... 経営者で言えば、ケビン・プランク(アンダーアーマー創業者・現CEO)に勝る人を未だに知らないし、師匠という意味では未だ高校時代のアメフト部の監督を上回る方はいない。でも、このご両名に関しては... 大げさに言えば、お会いしたその日に「電撃」が走るような興奮を覚えたのは確かだ。木村社長に至っては沖縄での集団ランチ、たった20分くらいの面会時間であった。

人脈作りに精が出せないのは... 一言でいうと世の中は「気取っている人」が大半だからだ。肩書きが上に行けば行くほどその傾向が強く、会話を進めるには、まずその人の「気取った部分」を尊重し、刺激しないよう注意を払う、そして気づかれないよう巧みにその部分のゴマをする必要がある。
このプロセス... 実際は僕の得意分野でもあるのだが、そうまでしないと話が進まない状態への不健全なストレスが溜まる。他人に気を使わせる、言葉を選ばせている状態で、果たして本当の「仕事」が出来るのだろうか。成長や改善、あるいは売上拡大であれ人格の向上であれ、前向きな共通目標が存在するのであれば、あとは率直且つ深い議論に自然と入り込むのではないか。必要なものは礼節であって、相手におもねることではない。そこには年齢や地位は関係ない。
で、このご両名はこれら「気取り」や「メンツ」とは全く逆の人柄である。彼らに必要なことはおべんちゃらや耳障りの良い言葉ではなく、正しい情報やまっとうな意見であって、未来に向かう話題以外にはほぼ関心を持たない。何度か面会や会食を重ねる中で出てくる過去の逸話や愚痴めいた嘆きも、未来へ向かうための復習やガス抜きであって、聞いてて面白くすら感じてしまう。

K常務からは、僕の印象を聞いたことがないが、木村社長からはいつも「最初会った時はすごい上から目線で"なんだ、この人"って感じでしたよ」と言われる。そのときに返す言葉が「僕もまったく同じですよ、木村社長!」という具合だ。正直にいうと、K常務にも同じような印象を受けた。
でも、そんな不機嫌さ丸出しの木村社長と集団ランチで目の前に座らされてしまったので、話さないわけにいかないし、もちろんお客様候補でもあるから、そのチャンスを逃す理由もない。こうしたシチュエーションで僕は世間話など出来ないから、いきなり「木村社長、大変失礼ですが今ってキングスの事業規模はどのくらいですか?」と直球を投げてみた。すると木村社長の仏頂面が一瞬更に険しくなって「昨年は約X億円です。」と率直な回答... まずその規模に驚いて、すかさず「その中でチケット収入は何%くらいですか?」と質問、木村社長は怪訝なムードになりながらも「約X0%です。」と、これも躊躇なく気取りなく回答してくれた。実際のところ、その二つの質問で十分だった。このわずか数十秒の時間で、僕の中にあるすべての壁が完全に崩壊した。あとはこのぶすっとした表情の男とチームへの興味しか湧かなかった。

一番言いづらい売上高、でも仕事をするとしたら一番必要な情報でもある。初対面でこの「売上高」の話は色々な意味でハードルが高い。でも、僕のそんな直球の質問も、がっちりと受け止め、即座に率直に回答する、その男らしさにまずは好感を持った。そして、チケット収入の割合は僕が知っている日本のプロチームではあり得ないほど高かった。その日のうちに、木村社長の著書を発見し、kindleで購入、一日で読破した。直感が確信に変わった。
日本のプロチーム、あるいはスポーツイベントは、すべてがスポンサーありきでスタートする。アメリカでは集客、お客様がいかに喜んでくれるか、という所に力点が集中するのと対照的だ。正解はもちろん、アメリカである。知っててなかなか出来ないし、知っているチームも集客手法があまりにもチープだったりする。琉球ゴールデンキングスは、堂々とした試合の演出、そしてゲームの体験を最大化するための数々の詳細な仕組みがある... など明確なビジョンと知識、そして実行力を持っている。しかもゼロからそのビジョンを描き、実行してきた創業社長でもある。失敗=廃業、という創業者独特の「綱渡りしてきました感」満載なのもまた共感性が高まった。


K常務に関しては、人生の大先輩ということもあり、何を書いたとしても評価的な視点であったり、ゴマすりっぽい気持ち悪い文章になる気がして、なかなかペンが進まない。
ただ、一つ言えることは、久しぶりにお会いした、もしかしたら初めてお目にかかれた心から尊敬できる大人である、という一言に尽きる。知識が圧倒的なだけでなく、我々の世代の意見にも興味を持ってくださり、議論の中から自らの新たな知識や思考を組み込んでいく。本来お持ちの性質として、不要な自尊心より知的好奇心の方が大きいことは外から見ても明確だ。木村社長や僕と違い、大きな組織で大きな事業を進めてこられたこともあって、経験のスケールが大きく、大事を成す為の具体的なPoint of Viewがある。とにかく勉強になることばかりなのである。のみならず、僕らのような若輩者を信頼して仕事を任せていただける大胆な発想と果敢な決断力を持っている... 当然のことながら、こっちは意気に感じて、さらに力が入ることは言うまでもない。そんな自分を分析すると、こうして本来持っている力をより高めてあげることがリーダーの仕事だなあ、と思えるし、本来あるべきパートナーシップのように思う。


私事であるが、パートナーである専務・今手とは15歳の時からもう30年の付き合いだ。常務・中村も27年の付き合いで、取締役・高下含めて僕の周りは長きに渡り、友達関係を続けている深い仲間が多い。ただ、このご両名とお会いして、感じたことは「付き合った時間より、どう生きてきたか!?」の方が、人間同士をより強く引き寄せるということだ。
今手と過ごした30年は濃いものであるが、同じ時期、全く出会ってなかったK常務も木村社長も、同じような目標を見て、同じような苦労をして、同じように克服の道を走って来たはずだ。だから、瞬間的に相手を受け入れ、共通する匂いを感じ合えるのだと思う。そういえば、16年前にボルチモアの空港で初めて出会ったケビン・プランクもまったく同じように、瞬時に受け入れ合った仲であった。

今年の出会いではないが、仲間と言えば、K常務と木村社長を引き合わせる土壌を作ってくれた政治家という職業をしている親友・G氏を記載しないわけにはいかない。諸々の事情で深くは書けないが、彼の類いまれな嗅覚に引き寄せられ、その情熱とまっすぐな人柄に魅了された人物は数知れない。能力が高いのは当然としても、彼の人柄の良さはこれに勝る人を見たことが無い。彼のおかげで、様々な出会いが価値を生み、勇気となり、具体的な仕事となり... 明日への希望をどれだけもらってきたことか。自身を「媒体」などと称するが、謙遜もいいところで、人を引き合わせ、化学反応を起こさせながら、同時に自身の見聞や知識を大きく拡張させる、そんな巨大な器を持っている。今後も共に戦っていく真の盟友であり、ますますの切磋琢磨を通じて、どこまで成長し合えるか、最高の好敵手でもある。

他にも... まさについ最近も、とても素敵な出会いがあり、最後の最後まで、出会いに恵まれた一年であったなあ、とつくづく感じる。

・・・・

今から約14年前、ケビンと同じ部屋に泊まった。ほろ酔いのまま、二人でベッドの上で寝転び、真っ暗ななかでこんな会話をした。

「ケビン、俺とお前は仕事をともにしていく限り、ずっと友達だと思う。仕事とは何と凄いモノだろう... 小学生の頃、親友と呼び合う仲間がいた。卒業式で泣きながら"一生の友達でいよう"と誓い合った。中学校でも同じだった。でも今はどうだろう。その時の誓いのまま友達関係を続けている人は一人もいない。高校のときに出会った今手とは仕事の関係で今でも深く付き合っている。でもそれは、仕事を通じて、お互いの人間性をむき出しにして、欲望をぶつけ合い、理性で制御し合い、夢を語り、欠点を指摘し合い、時には殴り合いまでしてきたからだ。俺とケビンは出会ってまだ二年だけど、既に子供の頃の親友達以上に、お互いの人間性をぶつけ合っている。そして、明らかに二人とも二年前より成長している。仕事が本当の友情を作るんじゃないだろうか... 仕事って凄いな。仕事っていいな」

その後、ケビンは幾度となく、様々な場所でこの夜の二人の会話を披露する。時には、二人の信頼関係を説明するとき、友情という言葉を説明するとき、仕事の定義をするとき... 十数年経った今... 歳を重ね、環境が変わり、体型が変わり、立場が変わった今も、二人の関係は当時と何一つ変わらない。

上手くいかない現実に向き合ったとき。
自分の限界を感じたとき。
諦めそうなとき。
無力感でどうにもならないとき。

場所や時代をともにしていなくても、いつでも、自分と同じような苦労をしているチームメイトがどこかにいる。

あいつに良いところをみせたい。
あいつが頑張っているのに。
あいつができて俺ができないはずがない。
あいつの方が俺よりもきっと厳しいだろう。

そんなことを思い合える仲間が、瞬間瞬間を支えてくれ、ダメな僕を支えてくれた。

仕事とは、まさに生き様そのものだ。

この瞬間も、見知らぬ国の見知らぬ誰かが、僕らと同じような生き様を歩み、いつかどこかで出会うかもしれない。

そんな一期一会に見逃されぬよう、見逃さぬよう。

いつでも心の静寂を保ち、困難を受け止め、深く思考し、正しい決断を導きだせる、そんな自分を目指して精進しよう。

自分と同じくらい他人を愛せる人でありたい、願わくば自分より他人を愛せる人でありたい...

ケビンの名言の一つ、

「Shoe Loves Shoe」(安田は安田を愛している...Shoeは僕のニックネーム)

その言やよし!
自分をもっともっと愛せるよう、素敵な自分に育て、その愛より大きな愛を、より多くの人々へ届けられるような、そんな人生を歩んでいこう。

人生の折り返し地点をとっくに過ぎた2014年の師走... 色々な方々に支えられ、大きな愛に包まれた年だったように感じる。その愛に甘えることなく、精一杯の"愛返し"が出来るよう、2015年のイメージを持とう。

一期一会が紡がれて、点と点が結ばれて、地殻変動となる。
人に支えられ、人を支えられるように。

No, I won't be afraid,
No, I won't be afraid
Just as long as you stand,
Stand by me...

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